約束
 木原君の隣に童顔の女性が映っているのに気づいた。木原君のおかあさんと似ていたが、別人だ。

「この人ってお母さんの親戚か何か?」

 彼はその写真を見て、声をもらす。そして、さらさらの髪の毛をかきあげると、首を横に振った。

「違うよ。俺の本当の母親。今の母親は後妻だから」

 彼女が若かったのはそういう理由があったんだろう。勝手に木原君と彼女をにていると思ってしまって悪かったかもしれない。

 彼がアルバムを見せるのを嫌がった理由だったんだろうか。

 私はバツが悪くなり、無言でページをめくる。可愛い彼の姿が飛び込んでくるが、あまりそちらに心を動かされることはなかった。

 彼に対して悪いことを言ってしまったかもしれないという罪悪感のようなものが先行したからだ。

 だが、私の手はあるところで止まる。そして、もしかしたらという気持ちが湧き上がってきた。そんな考えを何度か否定する。否定してページをめくるということを何度も繰り返したときだった。

 ある写真に釘付けになる。そこには彼だけではない。他にも可愛い男の子と女の子の姿があった。その姿が私の中にある記憶と重なっていったのだ。

 ありえないことじゃない。それだけの要因が揃っている。思い出せば思い出すほど、その考えが強固なものになっていったのだ。

「木原君は幼稚園のときに女の子と遊んだ記憶ってない? 春先の、夕方の、すごく夕焼けが綺麗で悲しかったとき」
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