約束
「あれは、北田だよ」

 私は驚いていた。だが、全くヒントがなかったわけじゃない。百合も言っていたのだ。一馬さんと幼馴染だった、と。そうだったら三人があのときから知り合いでもおかしくない。

「彼女も幼稚園まで同じだったんだ。小学校の入学してしばらくして俺は引越し。北田が引っ越してきたのは中学のときだったかな。結局、一馬だけ地元に残っていたから。北田も君があのときの子だと分かっていたみたいだったよ」

「そんなに変わってないかな」

「見た目もだけど、雰囲気がそのままだなって思った。ついでに、隠しても仕方ないから言うけど、母さんは俺の母親の妹なんだ。俺が幼稚園のときに、俺と一馬のために再婚をしたみたいだった」

「一馬さん?」

 彼は肩をすくめると、天を仰いでいた。

「あいつは君に話をしていいと言っていたから言うけど、あまり直接は言わないであげてほしい。俺の母親は、一馬のお父さんと再婚したんだ」

「でも、いとこだというのは?」

 それなら兄弟になるのではないかと思っていた。

「実際は兄弟でもあるかもね。でも、俺も一馬もいとこだと思っているよ。一馬のお父さんは俺のおじさん。父さんの弟なんだ」

「ごめんなさい」

 そこまで複雑な事情を考えもしなかった。

「俺は気にしていないからいいよ。小さかったし、そこまで母親っ子だったわけじゃないし」
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