約束
 もうこんな失態は二度と演じないようにしないとと思うからだ。
 私と晴実が並んで歩き、その少し前を野木君が歩いている。晴実はそんな彼に時折話しかける。彼は時折、彼女の言葉に返答をしていた。

 晴実と野木君は傍から見ているとすごく仲がいいなとつくづく思う。

 そのとき、晴実の足が止まる。いつも彼女と帰るときに分かれる交差点だ。この道を右手に行けば、晴実の家がある。私の家はまっすぐだ。

「またね」

 晴実と野木君に手を振り、別れた。二人の家は途中まで一緒らしい。

 彼があのとき私と交わした約束の意味は今になれば分かる。木原君のお母さんのことだったんだろう。友達にそういうことを言うのかと不思議に感じる人もいるだろうが、もう十一年目のつきあいということを考えると、不思議には思わなかった。

 彼から好きと言われて一ヶ月と少し。今では友達のように話をする。その間、木原君と野木君の関係を晴実からも含めていろいろ聞いた。彼と木原君は小学校から同じ学校に通い、ずっと良い友人関係を築いているらしい。その分、野木君の木原君への思いも、普通の友人以上のものがあるんだろう。

 あと野木君も女子生徒からはかなり人気があるらしい。だが、彼はほとんど女子生徒とは話をしない。百合とは木原君を通じて仲が良いようで、百合へのやっかみの一因になっていたのだろうか。


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