約束
「律儀というか変わっているね。でも、気に入っているなら鞄につけたほうが雅哉は喜ぶ気がする」

 鶴の一声とは今の状況を言うんだろうか。少し違うかな。

 私は袋から出すと、鞄の脇にある留め金にかけてみる。それを一馬さんに見せると、彼は笑顔で応えてくれた。

 そのとき、パフェとコーヒーがそれぞれ届く。私は早速中のアイスが溶けないうちに食べることにした。口に運ぶと、甘い香りがふんわりと広がる。

「おいしい」

「そういうところがすごく可愛いと思うよ」

 一馬さんは私を見て、微笑む。

 彼にそう言われると、男の人から好きと言われたというよりは、身内からそう言われたようなへんな気恥ずかしさがある。お兄ちゃんがいたらこんな感じなのかもしれないと思う。

 初めは木原君と似ていると思い、妙なときめきがあったが、その気持ちは今とは別物だ。

「でも、あまり女の子に可愛いと言うと、誤解されちゃいますよ。私は百合のことを知っているから大丈夫ですけど」
< 240 / 546 >

この作品をシェア

pagetop