約束
「電話鳴っているよ」

「後で取るよ」

 彼はそう言うと寂しそうに笑い、部屋に入っていく。だが、着信音が途切れたのはそれからしばらく経ってからだった。

 彼はそれから幾度か、電話が鳴っているのに取りたがらないことがあった。そして、発信者の名前が見てしまったことがあり、その電話をかけてきているのは一馬さんだと気付いてしまった。
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