約束
 彼の口調がいつもより強くなっていた。

「一馬だって、よかったら母親に会えばって何度も言うんだよ。後悔しないようにってさ。俺は会わなくても後悔しない。一馬なんてあの人のわがままで苦労してきたのに、バカだよ」

 でも、彼はそういう人だから。優しくて、ほかの人のことを必死に考えているんだろう。きっと今は弟みたいな彼のことを必死で考えて電話をしてきたのだろう。

 彼は息を吐くと、天を仰いだ。

「分かっているんだ。俺がどうすべきことかってくらい。そうしないといけないってことくらい。でも、心の整理がつかない」
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