約束
「そんなことないよ。話を聞いてくれてありがとう」

 木原君が慌てたような声でそう言う。ようなと思ってしまうのは、私の視界が霞んで彼の顔がはっきり見えないからだ。

 泣いたら彼がそういうことくらい分かっていたはずなのに。

 何でわたしはこうなんだろう。

「今の私は話を聞いてあげることしかできない。でも、話だけならいつでも何時間でも聞くから、愚痴でもいいから何でも言ってほしいの」

 このままだとダメだ。もっと強くなりたいし、彼から頼られる人になりたいと心から思った。

「ありがとう。タオルもらってこようか」

「ティッシュでいい」
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