約束
「いや。飲み物でもいるかなと思って持ってきたんだけど。じゃあ、続きを楽しんでね」

 彼女はそう言うと、木原君の手にペットボトルを二本置く。そして、彼女を追いかけてきた百合に引きずられるようにして自分たちの席に戻っていった。

 彼女なりに木原君のことを心配していたのかもしれない。

小学生のとき同じクラスであれば、何らかの形で家庭の事情を知っている可能性もあったからだ。まさか私たちが手をつないでいるとは思わなかったんだろうけど。

 景色が一変する。視界を隠していた建物の存在がなくなり、一面に広がるのは緑の世界。昔、親に連れられ、似たような景色を見た記憶がある。
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