約束
 電車がとまり、私達は車外に出る。

 ここに木原君の本当のお母さんがいる。そう思うと、複雑な気持ちで閑散とした駅の構内を見渡していた。

 改札口まで行くと、すでに晴実と百合の姿があった。二人は私たちを見て、顔を合わせると、笑っていた。手をつないでいたことがばれているんだろう。

 木原君はあまり気にしていないのか、気付いていないのか、とりわけ何もいわなかった。

 出発は朝だったが、もう既に昼を大きく過ぎている。木原君の家に行った後は百合の家に行き、明日は三人でどこかに遊びに行く予定だった。

 百合にそのことを言うと、彼女は「この辺りには畑と森しかない」と苦笑いを浮かべていた。
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