約束
 祖母の家に遊びに来たときは近くに遊ぶ場所がなかった記憶がある。車でもあればどこかに行けるのだが、高校生なので免許もない。

だから電車で近場まで行こうと計画していた。

「木原君の家に行くなら、その間ここでコーヒーでも飲んで待っているよ」

 百合の視線の先にはシンプルな喫茶店がある。二人はそう示し合わせていたのか、目を見合わせると互いにうなずいていた。

「私、どこに行けばいい?」

「彼の実家はここから歩いて五分くらいだから戻ってきなさい。迷ったら早めに電話してね。迎えに行くから」
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