約束
 私はそこで待ち合わせをすると、木原君のところまで戻る。

「親ってさ何なんだろうね」

 彼の家に向かう途中、木原君が口を開いた。

「私にとっての親はお父さんとお母さんだけど」

 彼にとっては違うのだ。少なくともお父さんは一人だけど、母親のような存在が二人いる。それも二人は姉妹で、産みの母親は彼が大事に思っている人のお父さんを結果的に奪ってしまった。

「正直羨ましいよ。普通で、それでいて両親の仲がいいって難しい気がするから」

 私は彼の言葉に頷く。

「無理に好きにならなくてもいいとは思うよ。ただ、結婚して、自分が親になることがあったら子どもにはそんな思いさないようにしたらいいんじゃないかなって思う」

 木原君のこれからの未来。彼が一緒に過ごしたいとおもう女性がいればそうあってほしい。

「結婚か。俺にはちょっと難しいかもな」

 彼は苦笑いを浮かべている。

「お母さんのことがトラウマになっているのかな」
「そんなつもりはないけど、分からない」

 彼は切なそうに微笑んでいた。
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