約束
「今まで人を好きになったこととかないの?」

「あるにはあるけど、さ。怖くなった。人を好きになっても、その人に裏切られるのが」

 彼から目をそらすことができなかった。私の胸が締め付けられるように苦しい。

「恥ずかしい話だけど、何だかんだ言っても、俺は母親のこと好きだったんだよな。結局、親だから、そうなのかって受け入れられた部分はあると思う。生まれた瞬間に親が決まっていて、親を選べないと割り切ってきた。

でも、一番好きな人にそんな風に裏切られたくない。それなら彼女とかいらない、遠くから見ているだけでいいと思うようになっていた」
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