約束
「一馬さん?」

 晴実がにやにやしながら百合に問いかける。

「何であなたがそんなこと知っているのよ」

 百合の顔が真っ赤になる。

「昨日、デートしていたよね。偶然みちゃった」

「あれは、違うのよ」

 百合の表情が一気に暗くなる。

 私と晴実は顔を見合わせた。

「変なこと言った? ごめん」

「違うの。そうじゃなくていろいろあったのよ」

 彼女はそれ以上、その話題に触れようとしなかった。私も晴実も互いに何かを感じ取り、それには触れないようにしようと決めたのだ。

 彼女は携帯を片付けると食事の用意があるともどっていく。私も晴実も百合の変わりように、それ以上彼女の話をするのを意図的に避けていた。

 しばらく経ち、百合がお盆に食事を載せてやってきた。

「由佳と晴実はここで食べてね。私はおばあちゃんと食べるよ」

「分かった」

 私はカレーやシチューなど私でも比較的簡単に作れるものを想像していたが、運ばれてきた品を見て、私も晴実も顔を見合わせていた。

 煮物や、きんぴらごぼう、ポテトサラダなど。盛り付けなども綺麗で、どこかに食べに行ったようだ。

「百合って料理上手なんだね」

 晴実はため息交じりにそう漏らした。

「そんなことないよ。普通だって。いつもやっていると嫌でも上手になる」
「いつもってお母さんも働いているの?」

 私の問いかけに百合は首をかしげて微笑む。
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