約束
 昔、この場所では多くの星が見えた気がした。だが、今では近くを照らすあかりのためなのか、子供の頃の思いこみだったのか、私の家よりも若干多い程度の星が瞬いているだけだった。

「今日、木原君に好きと言われたんだよね」

 彼女は私のそばまで来ると、囁くようにしていった。

 私は彼女の言葉を聴き、思わず顔を抑えていた。そこまで顔に出ていたのだろうか。

「一目見たら分かるわよ、幸せそう。良かったね」

 百合は微笑んでいた。

 思い出しただけで、顔がにやけそうになる幸せな記憶だ。話し相手が晴実ならそこでのろけてもよかったのかもしれない。でも、百合が木原君を好きだったことを知っているからこそ、私は何も言えずにいた。

 そんな私を見て百合は呆れたように笑う。

「何を気にしているのよ。昔のことだって言ったじゃない。あなたが好きなら彼と付き合えばいいのよ。私も応援しているよ。彼とあなたには障害になるものがなにもないのだから」

「ありがとう」

 意識したわけでもないのに視界が霞んでいた。

「どうして泣くのよ。幸せなのでしょう」
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