約束
 彼女は長い髪の毛を指先ですく。

「晴実に伝えた?」

「まだ」

「あの子、あなたと彼はすでに付き合っていると思い込んでいるから聞いたらびっくりするよね」

「私、そんなことを一言も言ってないよ」

「あなたたちを見ていたら、そう見えるらしいわ。あなたたちは本当にお似合いだったからって。気持ちも分かるけど。空を眺めるのもいいけど、今から驚かせに行こうか」

 私は百合と一緒に部屋に戻る。

 晴実は私の「今日から付き合うことにした」という言葉に目を大きく見開く。

「え? まだ付き合ってなかったの?」

「だから、今までのはあなたの早とちりよ」

「意外。絶対付き合っていると思ったのに。今日も電車でいちゃついていたし」

「手をつないでいただけじゃない。それもほんの短時間だけだよ」

 思わず焦り、本音が飛び出してきた。

 百合も晴実もそんな私を見て笑っていた。
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