約束
 食事はおいしかった。だが、一馬さんと百合のいつもと違う雰囲気に味を楽しむ余裕はなかった。

 お店を出て、百合のお父さんが支払いをしているとき、晴実が私の傍らに来て、そっと囁いた。

「やっぱり何かあったのかな?」

 私も首を横に振るしかなかった。気にはなったが、二人にとても聞ける雰囲気ではない。


 その後は、一馬さんと百合のお父さんは用事があるとかで二人でその後どこかに行ってしまった。そして、二人が去ったことで、百合の表情が少し和んだことにほっと胸をなでおろしていた。



 それから、私たちは駅に戻ると電車に乗り、買い物に行った。私の家の近くでは見かけないようなお店がたくさんあったのだ。

 そこで可愛い洋服を売っているお店を見付け、入ってみることにした。晴実はその店が気に入ったのか、セール中だったことも重なり、何着か試着すると購入していた。

 そんな晴実を見て百合は苦笑いを浮かべる。
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