約束
 太陽が水平線に沈み、辺りは闇に包まれる。私達は日が変わる前に眠ることにした。

 夜中、物音で目を覚ます。窓から差し込む月明かりを頼りに室内を見渡すと、いるはずの少女が一人駆けていたのに気付いた。

「百合?」

 名前を呼んだが、返事はなかった。電気をつけて見るが、三つ編みにしてすやすやと眠る晴実がいるだけで、彼女の姿はない。


夜、目を覚まし散歩に出かけたか、別の部屋にいる可能性もある。

 時刻は夜の一時を回っていた。お節介かもしれない。そう思っても、今日の百合の暗い表情が気になり、電気を消すと部屋を出た。

 近くを探してみて、彼女がいなければ部屋に戻ればいい。

 玄関のドアに触れると、鍵はかかっていなかった。

 私は音をできるだけ立てないようにして、家の外に出る。外に出たとき、立ちすくむ一人の少女の姿を見つけた。
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