約束
 戸惑う彼の親に私のお父さんはいい物件が見つかる最初の数ヶ月だけでもと押し切っていた。どうやら父親は木原君のことを私達の想像以上に気に入ったようだ。男が一人しかいないという家庭環境も大きかったのかもしれない。

 そんな父親の行動を見かねたのか母親がこう提案をしていたのだ。

「早めにここに越して、様子を見てみたらどうかしら。私の家は構わないけど、無理強いはできないからね」

 母親の提案に木原君の両親も納得したようだった。

 だからといって今日、明日ということではなく、一週間程度空けてから彼が家にやってくることになった。早めにしたのはなじめなかった場合、新しい物件を探す時間的な余裕も考えたんだろう。

うまく行かない可能性もあるけど、うまく行けば木原君と一緒に住むことになる。それがその日、決まったことだった。

 その日は簡単に私の家を案内することになった。年が近いからということで、抜擢されたのは他でもない私。私のお父さんは木原君のお父さんと楽しそうに話をしていた。
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