約束
 私は木原君の家まで送ってもらい、そこから歩いて帰ることになった。彼女は百合の家まで送ってくれると言ったが、細い道を通ることもあり、ここで大丈夫だと伝えたのだ。


 強い太陽の日差しが再び私に降り注ぐ。だが、不思議と暑さは感じなかった。木原君の母親に出会った複雑な気持ちが何よりも先行してしまっていたんだろう。

 そのときはどういう経過を経てそんな結論に達したか分からなかった。ただ、あのときの彼に会いたかったからかもしれない。

 私は記憶の中の道を思い出しながら歩き続けた。森を分け入っていくと、足場で小枝の折れる音が響く。一気に視界が一気に開ける。
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