約束
 私たちは過去におばあちゃんのあった家の前に行った。彼の案内つきで、だ。

 その場所に行くと、記憶の景色に別の画像が埋め込まれたようななんともいえない違和感があった。同時に祖母の家はもうないのだと改めて思い知らされる。

「本当にがらっとかわっちゃったんだね」

 祖母の家のあった場所の前にじっと佇む。

「あれから十年以上経つからね」

 私は屈むと、あのときと変わったであろう地面の土をじっと見ていた。

「あのときはどうしてあのことであんなに怒っていたのか自分でも驚くくらい不思議だったな」

 私が最後におばあちゃんに言ったのは彼女に対する文句だ。お父さんに買ってもらったガラスでできた置物を彼女が割ってしまったのだ。
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