約束
 彼と一緒に歩くのは緊張するけど、嫌がった手前、拒否することはできなかった。これ以上木原君に変なイメージを与えたくなかったからだ。

和室に、浴室、トイレの場所などをおおまかに説明する。そして、二階に行くと、簡単に部屋の位置を教えた。木原君は隣が私の部屋だと聞いても、顔色一つ変えない。

当たり前といえばそうだけど、少しだけ悲しい気がしないでもない。

「変なことになってしまってごめんね」

「気にしないで。俺の親も少し過保護なところがあるから。もうすぐ十七なのに呆れちゃうよな」

 木原君はそういうと、笑顔を浮かべている。木原君の誕生日は八月。私よりも七ヶ月も早い。でも、彼に誕生日のことを知っているということは黙っていた。そんなことを知っていたりすると気味が悪いと思われそうだったから。

「結構、広いんだね」

「うん。すごくバカな理由でこんな広い家を買ったらしいんだ」

「理由って」

「子供の家族と同居とか考えていたみたいだよ」

「同居って」
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