約束
 彼は辛い表情を全く見せなかった。

「こんな話聞かせて悪いね。だから百合のことはもういいんだよ」

 私は首を横に振る。

 彼がもっと利己的な人ならどんなに良かっただろう。彼が親だから自分の面倒を見て当然とか、親だから子供の幸せを考えるべきなんてことを言ってくれたら、私の胸の中の疼きがマシになってくれるはずなのに、彼の言葉はその疼きを余計にひどいものにしてしまう。

 何で神様は幸せを平等に与えてくれないのだろう。彼も多くの苦労を味わっているはずなのに。そして、なぜ私はこんなに無力なのだろう
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