約束
「俺のことはいいから、雅哉のことを考えてあげろよな。あいつの彼女になったんだろう」

 彼の言葉にうなずく。明るい気持ちにはなれなかった。

「雅哉が幸せそうで安心した。だから、君もそんな顔をしないで笑ったほうがいいよ」

 彼はそれ以上百合の話には触れなかった。
 お店を出るとき、私の分も支払いを済ませると、笑顔でこういった。

「今からでも学校に行くように。君の両親は君が学校に行っていると思っているんだから。俺は今から用事があるから帰るよ」

 私は返事をせずに、ただ頷くだけだった。それは一馬さんの言葉に反発を覚えたからじゃない。私の予想通り、私の目の前の景色が歪み、彼の後姿がかき混ぜたようにぐちゃぐちゃになる。

 私の目から熱いものが毀れだす。

 お節介だって分かっている。でも、なんでこうちぐはぐでうまくいかないんだろう。
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