約束
 木原君は意味を察したのか苦笑いを浮かべていた。要は私かお姉ちゃんが結婚したときに一緒に住めればとでも思っていたんだろう。


女の子二人が生まれるということが予想外だった可能性もあるけど。

 でも、それだけではないことは薄々感じていた。

「本当はおばあちゃんと一緒に暮らしたかったんだと思うの。おじいちゃんが早くに亡くなっていたから、年を取ったときに、便利だからって。でも、おばあちゃんは最後まで生まれ育った場所がいいからと離れなかったけど」

 そして、彼女は亡くなった。体調が悪いことを私の家族にも、父親の兄弟にも知らせなかった。

いつもの風邪だと思っていたのか、迷惑をかけたくなかったのか、それとも祖父の傍に行くことを望んでいたのかは明らかでない。

ただ、彼女は私が小さい頃に亡くなり、その影響からか、この家には余ってしまった部屋が二つほどあった。そのうちの一つは木原君が住む予定の部屋で、もう一つは空き部屋になっていた。
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