約束
 彼女の強引さに押し切られる形で、入ったばかりのお店に入り、そのことを伝えていた。

彼女は時折、目を見開きながら、話を最後まで聞いてくれた。最後まで言うと、その黒髪をゆっくりとなぞる。

「それって、両親は知っているの?」

「知らないと思います」
「話をしてみたらいいのにね」

 彼女は寂しそうな笑みを浮べていた。

「言えないのじゃないかなって思います。親に幸せになって欲しいから。彼がいっていることも分かるけど、折角自分の気持ちに気付いた友達が気の毒で。そのことを知らないさっきの彼もやっぱり気の毒で。

私、お節介だから、友達に幸せになって欲しい。でも、そしたらきっと二人の両親は幸せになれなくて。そんなことを願ってしまう私はすごく嫌な子なんです」
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