約束
 一馬さんのお母さんと、百合のお父さんがソファに座っていて、一馬さんはそこから少し離れたダイニングテーブルに腰を下ろし、頭を抱えているようだった。

 一馬さんのお母さんは私たちを一瞥する。

「話がいつの間にか飛躍していることは置いておくわ。信明さんと話し合って、結婚はしないことにしたの。一馬は百合ちゃんのことが好きなのよね」

 一馬さんの表情が暗くなる。

「もう忘れたよ」

 百合の顔が強張る。私は思わず百合を見ていた。そしてもう一人彼女を見ている存在に気付く。一馬さんのお母さんだ。
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