約束
 修学旅行の日程もあっという間に過ぎさり、後は受験モードに突入だけになる予定だった。だが、私には気がかりなことがあった。

「私、木原君に誕生日をあげてないんだよね」

 晴実は口をぽかんと開ける。

「だって木原君の誕生日って夏だよね。もうすぐクリスマスだよ」

「夏っていろいろあったじゃない。百合のこととか、木原君の家のこととか。彼にほしいものを聞いて買おうと思っていたらいつの間にか、こんな時期になっていて。今更、話題にも出せないよね」

「木原君の誕生日ってつきあう前だから、別にいいんじゃないの? 今更あげるのも違和感あるかも」

 私は目の前のジュースを口に含む。口の中にオレンジの酸味が広がり、ジュースの残量が目に見えて減っていく。
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