約束
 能天気だと思っていた父親から聞く、久々に真面目な話だ。

実はいろいろと木原君のことを考えてくれていたんだろう。

 私はこの家に生まれて、木原君に会うことができてよかったと心から思っていた。

 年が明けてから、彼は戻ってきた。

彼は疲れているのか、何かを考え込んでいるように見えた。母親が亡くなったのだ。

恐らく保険金の話なども聞かされたのだろう。だから彼は思い悩み、何かを考えているのだと思っていた。


 私は彼のために買ったセーターを渡すことができなかった。実の母親を失い、悩んでいる彼にクリスマスだの、誕生日プレゼントだの言い出せるわけもなかった。私はセーターの入った袋を引き出しの中に片付け、そのうち渡そうと決めた。
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