約束
一人きりになった教室で頬杖をつき窓の外を見る。
木原君はお母さんが亡くなってからも取り乱したりすることはなかった。当たり前のような時間が流れることが、逆に気を使ってしまい、木原君とどこかに遊びに行きたいと口に出すことさえ言えないでいた。
でも、きっと大学に入れば。そういう気持ちがどこかにあったんだと思う。
私はトイレに行くために席を立つ。
もうすぐバレンタインだ。私は彼にチョコをあげるかどうかも決めかねていた。
百合にそれを言えば、そこまで気にする必要はないと言っていたけれど。
教室の外に出たとき、冷たい空気が私の体に触れる。隣のクラスから光と、声が漏れていた。いつもなら気にせず通り過ぎるが、聞こえてきた会話がそうさせてくれなかった。
「今年、木原君って誰かからチョコを受け取るのかな」
話をしていたのは弘田昌美と、原由布子の二人だった。弘田昌美は頻繁に先生に怒られているというイメージが強く、存在が派手な感じの子だった。原由布子はいわばその目立つ彼女のとりまきのような子。先ほど口を開いたのは原さんのほうだった。
「昨年みたいに全部断るんじゃないの? 彼女はいないみたいだし」
「木原君と田崎さんがつきあっているって噂、どう思う?」
木原君はお母さんが亡くなってからも取り乱したりすることはなかった。当たり前のような時間が流れることが、逆に気を使ってしまい、木原君とどこかに遊びに行きたいと口に出すことさえ言えないでいた。
でも、きっと大学に入れば。そういう気持ちがどこかにあったんだと思う。
私はトイレに行くために席を立つ。
もうすぐバレンタインだ。私は彼にチョコをあげるかどうかも決めかねていた。
百合にそれを言えば、そこまで気にする必要はないと言っていたけれど。
教室の外に出たとき、冷たい空気が私の体に触れる。隣のクラスから光と、声が漏れていた。いつもなら気にせず通り過ぎるが、聞こえてきた会話がそうさせてくれなかった。
「今年、木原君って誰かからチョコを受け取るのかな」
話をしていたのは弘田昌美と、原由布子の二人だった。弘田昌美は頻繁に先生に怒られているというイメージが強く、存在が派手な感じの子だった。原由布子はいわばその目立つ彼女のとりまきのような子。先ほど口を開いたのは原さんのほうだった。
「昨年みたいに全部断るんじゃないの? 彼女はいないみたいだし」
「木原君と田崎さんがつきあっているって噂、どう思う?」