約束
「どうかした?」
「何でもない」
木原君は何で私を好きになってくれたんだろう。私はその理由を知らないのだ。そして、私はどこかで気にしていた。
私と彼の付き合いを知っている人は好意的に捉えてくれた。彼にとってこの一年は大変で変化の多い年だった。彼の心が弱っている時にそういうつもりはなくても、その隙間に入り込んでしまったんじゃないかと。
それも恋愛の作戦といえばそうなのかもしれない。でも、私が木原君を純粋に好きになったように、彼にも同じ気持ちでいてほしいと望んでいたのだ。
彼女たちの言葉に傷ついたのも、学校で付き合いを隠してしまったのも、そういう後ろめたい気持ちがなかったといえば嘘になる。
だからせめてその理由を知りたいと思うことは幾度となくあった。でも、聞く勇気がなかったし、優しいとか、彼女たちの言っていた言葉を肯定するようなことを言われたら、泣いてしまいそうな気がして、言い出せなかった。