約束
「あの人達ってまだそんなことやっているんだ。私も同じことを言われたわ。自分で渡せばと言ったら、中学のときあれこれ言われたな」

「何かあったの?」

 晴実は不思議そうに尋ねる。

「可愛いからっていい気になるんじゃないとか? 可愛くないとかいろいろ言われたな」

 彼女は腰に当てていた手を離すと、それを右耳の近くまで持っていき、指を回転させた。艶のある髪の毛が右手のひとさし指に巻きついていく。

 いわれたくない言葉のはずなのに、声が心なしか弾んでいるような気がするのはなぜなんだろうか。

「何かやり返したの?」

 晴実は聞いてはいけないものを聞くような口調で問いかける。

「そんな面倒なことしなわよ。ただ、はっきり言いたいことを言っただけ。告白したいなら自分でしたらってね」
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