約束
 バレンタインの日、私は緊張で胸を高鳴らせながら、木原君の部屋をノックした。チョコをあげるべきなのか、否かの判断を下せずに一応チョコレートは買っていた。

 だが、返事はない。部屋を覗くと、木原君の姿は机にもない。彼はベッドで突っ伏して眠ってしまっていたのだ。私は脇にある薄手の毛布を彼の体にかけた。

「木原君らしいというかなんというか」

 もう夜の十時を過ぎている。今日は早めにダウンをしてしまったんだろう。バレンタインだからとかそうしたことを気にしていないんだろうから。

 机の上にでも置いておこうかな。

 そう思い、彼の机を見たとき、心臓が嫌な鼓動を刻むのが分かった。
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