約束
「まあ、一人暮らしをすると生活費もかかるし、仕方ないんだけどね。でも、木原君も同じ大学を受けるかもしれないってね。この前、聞いてびっくりしちゃった」
彼女は私をみて、そう笑顔で口にする。
私の心臓がどくりと鳴る。
「大学?」
「本当、偶然だよね。北田さんや野木君も地元の大学にするらしいから、同じ中学の人は私達二人だけかな」
どうして「彼女」の私の前に、希実がそのことを知っているんだろう。
「希実って中学のときからずっと木原君のことを好きだったもんね。大学まで一緒だとチャンスじゃない?」
その声で顔をあげる。そこにいたのは佐藤さんという彼女と親しい友達だった。私達の席の前を通りかかったところのようだ。
「そんなことないよ。そのことは昔のことなんだから忘れてよ」