約束
 希実は頬を膨らます。だが、怒ったような言葉とは裏腹に今でも好きだと分かるほど、彼女の顔が赤くなっていた。

「あれだけ好きだって言っていたのに。今更照れなくていいんじゃないの?」

「だから、もういいんだって」

 彼女の顔が赤くなれば赤くなるほど、周りの友人は彼女をからかう。彼女は最後に私に「気にしないで」と言っていた。


 その日の放課後、私は木原君と帰りながらも、ずっと彼が言ってくれるのを待っていた。申し訳なさそうに志望校を変えた、と。

 でも、彼の口からきかされるのは、いつものように他愛ない話だ。
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