約束
 季節は六月にさしかかろうとしていた。

 昇降口で木原君と待ち合わせ、学校を出た。

「ここ最近、ずっと雨だね」

 私がそう口にすると、木原君は笑顔で「そうだね」と告げる。

 一年前、木原君と話をするだけで緊張して、勉強を教えてもらうようになった頃、私は彼とどんな話をしていたんだろう。

 少なくとも昨年の梅雨を一度も鬱陶しいと思ったことはなかった。ほんの些細な共通点を見付けるだけでも幸せだったんだと思う。

 私たちは差し障りのない会話をし、目の前の信号が赤に変わる。

 その時、私達の会話がぽつりと途切れた。
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