約束
 教室を出て少し歩いた時、希実が声を漏らす。

「筆箱忘れちゃった。取りに戻るね」

「ついていこうか?」

「大丈夫。すぐに戻ってくるね」

 私は窓辺に寄り掛かり、窓の外を見つめる。

 雨が降りしきり、私の視界が霞んでいた。この弱々しい気持ちを洗い流してくれたら良いのに。そんな他力願望なことを考える自分自身に笑ってしまう。

 笑い声が聞こえ、思わず身を潜めていた。誰といるかは分からないが、その一人が木原君ということくらいは分かる。
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