約束
「お前さ、この前篠崎と一緒にいるのを見たけど、つきあっているわけ?」

「まさか。偶然会っただけだよ」

「めちゃくちゃ怪しいよな。篠崎と出来ているんじゃないかって噂されているよ」

「そんなことないよ」

 いつの間にかそんな話が終わり、世間話に変わっていた。

 廊下の角を逆方向に曲がる彼の表情を私は見てしまった。彼はこうやって笑う人だったんだ、と。知っていたのに改めて気付かされる。

 私の前で木原君は優等生として笑っていた。あのお母さんに会いに行くと決めた時のように。
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