約束
 あの高校二年の四月以前に戻っただけ。これですべて元通りだ。そう望んだのは私のはずだったのになぜか涙が止まらなかった。

 だが、もっと別の言葉で彼に気持ちを伝えていれば、何か妥協策が見つかったのかもしれないのに。百合と一馬さんたちみたいに。でも、私にはそうできなかった。

 晴実達にそのことを伝えると、彼女たちは何も言わなかった。

 私たちの会話から木原君の話だけがすっぽりと消えた。自己防衛をするように、彼には私よりも相応しい人がいると何度も自分に言い聞かせていた。

 そして、学校ですれ違っても私達はいつの間にか目もあわせなくなっていた。
< 437 / 546 >

この作品をシェア

pagetop