約束
第二十一章 過去から未来へ
 夏休みを終えると、推薦入試が始まった。受験という言葉が重荷に思いながらも、受験だから自分を保てていたのだということも薄々気付いていた。

 今が高校三年でよかった、と思う。彼が志望校を変えたことも、私の家を出て行ったことも、あっと言う間に広まった。

 学校も晴実たちと一緒に帰ることがほとんどだ。

 彼と顔を合わせる機会もなくなり、同居人と同じ学校の生徒の差を思い知らされた。

 私は手元にある教科書から視線を窓の外に向ける。もう授業が終わり、多くの生徒が帰宅の途につき、クラス内にいるのは数えるほどだった。

「最近、木原君ってどこか冷たい感じがしない?」

「え? いつもどおり優しいじゃない」

 不意に聞こえてきた会話に無関心を装いながら、教科書のページをめくる。
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