約束
 彼女たちは顔を見合わせると、私をもう一度睨み、教室を出て行く。静かな校舎に二人の乱暴な足音が響く。

 その場には私と百合と晴実の三人が残された。

 百合は溜め息を吐くと、そのままその場を去ろうとした。

 私は彼女の姿が教室から消える前に呼び止める。

「北田さん」

 百合の髪が風になびき、ゆっくりと舞い上がる。その髪の隙間から、彼女の色白の肌が覗く。

 彼女の姿に一瞬目を奪われそうになった。彼女は私と目が合うと怪訝そうな顔をした。だが、不思議と怖いという気持ちはなかった。

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