約束
 希実とのことも考えると、チョコレートのことは黙っておいたほうが良い気がした。わたしはネックレスを見つめる。

「これを買うのを偶然見ちゃったの」
「え?」

 木原君の顔が引きつる。

「お前も無駄なことをしていたってわけ。むしろ余計なことのほうが正しいかな。悩まずに渡しておけば良かったのにね」

 一馬さんは木原君の肩を叩く。

「由佳ちゃんを送って帰れよ。ごはんは食べてきてもいいから」

 彼は私と木原君に別れを告げると、軽い足取りで帰っていく。

「まさかと思うけど、別れるっていたのって」

「ごめんなさい。木原君の大学のこととか、そのこととかいろんなことが積み重なって。今度から木原君に聞くようにするから」

 彼は短く息をつくと、肩をすくめていた。

「そっか。迷わずに、渡してしまえば良かったね」
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