約束

「でも、どうして渡してくれなかったの? すごく嬉しかったのに」

「君の誕生日を野村さんから聞いたけど、知っているって言い出せなかった。でも、また聞くのはわざとらしいし。そんなことを考えているうちに誕生日を過ぎてしまって、過ぎたら過ぎたで後付みたいになってしまった」

 どこかで聞いた理由に思わず噴き出す。

 私と木原君はつくづく同じことをしていたんだなと実感する。

「私も同じ。木原君の誕生日を知っていたのに、言い出せなかったんだ。一応、誕生日兼クリスマスでプレゼントも買っていたの」

 彼は驚いたように私を見ていた。

「セーターだけど、いるなら」

「ほしい」

「取りに来る?」

 彼は笑顔でうなずく。

 私は木原君と一緒に家に帰ることにした。だが、半分ほどの道のりを歩いたとき、私の携帯が鳴る。木原君の携帯も同時に鳴った。一馬さんからのメールだった。

 添付された写真を見て、顔が赤くなるのが分かった。それは私と木原君が電車の中で肩を寄せ合い、寝ている写真だった。木原君の携帯にも同じメールが届いていたようで、彼も困ったような笑みを浮かべていた。
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