約束
「今年のバレンタインに木原君にあげようとしたチョコを発見した」
「バレンタイン?」

 彼は驚いたように私を見る。

「食べるよ」

 とんでもないことを言い出そうとした彼の言葉を否定する。生チョコなので賞味期限はとっくに過ぎているし、お腹でも壊したら大変だ。

「ダメ。来年あげるから、来年もらって」

「分かった」

 木原君は名残惜しそうな顔をする。

 私はそれを机の上におくと、その下のセーターの中身を確認する。それは無事だったようだ。
< 502 / 546 >

この作品をシェア

pagetop