約束
第二十二章 春の訪れ
 月曜日の朝、教室に入ろうとした私を髪の長い少女が呼び止める。私が週末の出来事を彼女に伝える前に、彼女は笑顔を浮かべる。

「よかったね。一馬さんから聞いたよ。なんか電車の中でもすごく仲がよかったんだってね」

 微妙に誤解を招きそうな表現をされているような気がした。私は百合と一緒に外に出ると、一馬さんから送ってもらった写真を見せた。

「これのことだよね。多分」

「あ、なるほどね」

 そのとき、百合の体に影がかかる。少しおくれてやってきた晴実がそれを覗き込んでいたのだ。それを見ると、口元を綻ばせていた。

「やっと仲直りしたんだね。でも、遠距離になるけど大丈夫?」
「大丈夫だよ」

 今は不思議と不安はなかった。
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