約束
席に座ったとき、いつもより多くの人の視線を感じていた。木原君と一緒に学校に来ていたことが知れ渡っていたのかもしれない。次の休み時間に何か聞かれたら嫌だなと頬杖をつく。

 その時、私の机に影がかかる。立っていたのは希実だ。

 希実は私を見て、笑顔を浮かべる。彼女のこんなに明るい笑顔を見るのは今年の春以降のような気がした。

「木原君と仲直りしたんだね。よかった」

 その言葉にまだチャイムの音が残る教室がざわつくのが分かった。

「篠崎」

 そう呆れたように言ったのは私の隣の席に座っていた野木君だった。

「私のせいかなと少し気にしていたんだよね」

 彼女は野木君が言おうとした意味を察した様子もなく、自分のペースで言葉を続ける。
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