約束
一緒に来ていたことなどから既に手遅れなのは、教室のいたるところから届く刺さるような視線から想像できた。

 野木君の言葉の意味に気付かない彼女には、その教室内から浴びせられる視線も無関係だったようだ。

「すごくお似合いだと思うから、仲直りしてくれてよかった。由佳の話をしているときの木原君はすごく幸せそうだったから」

 そう彼女は笑顔で返す。

 私はもう何も反応を示せなくなっていた。

「教えるんじゃなかった」

 野木君はそんな彼女に呆れたのか、眉間にしわをよせ、頬杖をついていた。

「え? まだ秘密だったの?」

 私は苦笑いを浮かべていた。一馬さんは野木君にもチョコレートのことを伏せておいてくれたんだろう。そのことに少しほっとした。

 そのとき、先生が教室に入ってくる。ざわつきは消え、視線だけが残る。来週には冬休みに突入するので、大丈夫といえば大丈夫な気はする。
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