約束
 駅には多くの人が溢れていた。学生服を着た人、遊びに行くのか女の子同士のグループ、お年寄りや子供連れなど多くの人がいる。木原君は一度実家に戻り、荷物の整理をするらしい。私も一緒に来るかと聞かれたが、家族でしかできない話があることから、遠慮することにした。

 東京では一人暮らしをするらしい。もうアパートなども借りていて、入居するだけになっていた。数日実家に滞在し、それからその家に行くとのことだった。最初なので彼のお母さんも入学式の出席と新生活の準備を整えるために一緒に行くらしい。

 そのとき、銀色の車体がホームに入ってくる。そして、駅の構内にあふれていた人が、その中に飲み込まれていく。

「ゴールデンウィークには帰ってくるから」

「忙しかったら無理しないでね」

 私の言葉に彼は笑顔で答える。

 そのとき、プラットフォームに警笛が鳴り響く。これが私達の別れの合図だ。
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