約束
 四月になって私たちは大学に入学し、一馬さんの後輩にもなった。

 春の季節はあっという間に流れ、夏の足音が徐々に聞こえてくるようになる。

「今日は遅刻すると思った」

 私が苦笑いを浮かべ肩を落とすと、野木君が呆れたような顔をしている。

「君は高校一年のときと、ほとんど変わらないよね」

「でも、身長も少し伸びたよ」

 自分の姿を見て、客観的に違う部分を彼に伝えると、彼はこともあろうことか笑い出していた。

「何ミリ?」

「〇.七センチ」

 必死に逆らってそう言うと、彼は呆れたように笑う。

「素直に昔と変わらないくらいかわいいと言えばいいのにね」

 その声に振り返ると、大きめのバックを手にした百合の姿があった。彼女はすそにレースのある白のワンピースを太って見えることなく着こなしている。足元ではピンクのサンダルが淡い光を放っていた。
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