約束
「百合」

 朗らかな声が響き、振り返ると一馬さんが立っていた。集まる視線がもっと増えているような気がした。

 百合の頬がわずかに赤く染まっていた。

「今から家に行こうと思っていたんだけど」

 そこで、私と野木君の存在に気付いたみたいだ。

「由佳たちも来るんだって」

「じゃあ、何か作ってあげようか。ごはんでもおかしでも」

「何にしよう」

 一馬さんがそういうことを聞くのはたいてい私に対してだった。

 野木君は無反応だし、百合はあまり関心がない。

「帰りながら決めるといいよ」

 そういうと、一馬さんと百合が歩き出す。私と野木君はその少し後を歩くことにした。

「そういえば、昨日雅哉からメールが来た」

「来月の初めに帰ってくるんだよね」

 また彼と過ごせる夏がやってくる。いろいろと状況は変わったが、それでも夏という季節はどこか高校二年の夏を思い出す。
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