約束
「晴実もそれくらいに帰ってくるらしいね」

「そういえばそんなメールも着ていたね」

 野木君は表情を変えることなく、そう告げる。

 晴実と野木君は友達としては仲がよく、二人はメールのやりとりもしているようだった。

 友達もでき、授業も楽しいが好きな人はできそうにないとこの前、電話できいた。彼女はまだ野木君のことを思っているんだろう。

「また、遊びに行こうね」

「気が向いたら」

 彼はあまりそんな誘いに積極的に乗ってくることはない。でも、誘えばきてくれることはきてくれる。

 春の日帰り旅行もそんな感じだったから。私と晴実と百合が計画し、後から三人を誘ったのだ。

 そのとき食べたシュークリームの甘味を思い出し、一馬さんにリクエストをすることにした。

「シュークリームが食べたい」

「いいよ。作ってあげる」

 一馬さんは肩越しに振り返ると、笑顔を浮かべる。

 この場所に木原君がいてくれたら。入学して数ヶ月で数え切れないほど思った。
 でも、そのたびにいい聞かせるようにしていたのだ。
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